今にも羽ばたいていきそうな、もしくは空から舞い落ちたような、白という色彩と空気だけで完成されたかのような彫刻。
風のかたち、空気の音、花びらの息遣い、アーティスト、ルイーズ・フリドゥマンの手によって、それらは具現化される。
花びらのような繊細な形と、それらが集合してできた全体。それらは、静けさの中に存在する強力な磁力を帯びたかのように、鑑賞者を彼女の世界へと惹き込んでゆく。


ルイーズ・フリドゥマン
1989年にパリで生まれ、ブルゴーニュ在住。2012年ESAG-Penninghenアートスクールを卒業した後、ニューヨークの国際写真センターで写真を学ぶ。2015年からブルゴーニュに自身のアトリエを構える。
軽くて繊細な白い紙の作品を作ることから始め、2015年、パリのクロワジエホテルの中庭に設置された大作「La Fée des Pétales」(ラ・フェ・デ・ペタル)を制作し、陶芸制作に転向する。
同年、陶芸家ジャン・フランソワ・ルブルと出会ったことがきっかけで、技術を深め、芸術としてのプロセスの中で自身の表現方法を見出す。 2019年6月、ヴィンチ不動産とのコラボレーションにより、フランク・リースター文化大臣から「1棟1作品」賞を受賞。同年8月、北京で開催されたICAAホワイトチャイナ国際コンペティションに選ばれる。
作品はパリ、ギャラリー「Amélie Maison d’Art」と「Loo&Louギャラリー」に展示されている。
■あなたのアートをあなた自身でどう説明しますか?
私の仕事は自然が作る形の探求なんです。 私は土を造形し、そこから繊細なかたちの彫刻を生み出します。それを白い粉で包み、その上に光をとどまらせ輪郭を振動させます。 「動き」は、生きた形や吊り下げられた可動部分を通して、私の表現の重要な要素として現れます。 空気のように精妙な形、そして寸法による力強さを施した彫刻を通して、私は強さと脆弱性の間の出会いを探し求めています。 花びら、木、風…伝えようとしているのは私の感情なんです。
■制作やあなたの仕事全般において最も重要なことは何ですか?
自然を感じることは不可欠です。 それからひとりの時間が必要ですね。たいていは音楽をかけて、でも時には静寂がその時間に伴います。
■インスピレーションの源は何ですか?
自然は何よりももちろんまず一番にあります。でもオートクチュール、美食、建築も非常に重要なインスピレーション源なんです。
■なぜこの表現方法を選んだのですか?
私が最初に土に触れたとき、それはわたしにとって明らかだったんです。土は物質の四元素の1つであるし、自然、女性らしさ、創造を体現しているから。



■自身の作品で好きな作品はどれですか?
私の最初のプロジェクト「La Fée des Pétales」(ラ・フェ・デ・ペタル)は、私の目には最も特別なものであり続けています。第一に、これは私の最初の陶芸作品だったので、これが素晴らしい冒険の始まりになったからです。また、これまでに制作した中で最大の作品なんです。何百もの白と金の花びらがパリのオテルドクロワジールの屋外の中庭に長さ17メートルに渡って広がっています。
■あなたが過去にしたコラボレーションで印象深いものはありますか?
ヴィンチ・イモビリエとのコラボレーションは本当に楽しかったです。 建築に関連したオーダーメイドの作品を考えて、チームで段階的に作業することは私に多くのことをもたらしました。 このコラボレーションのおかげで、「1棟1作品」の賞を受賞することができました。
■プロジェクトで何を強調したいですか? あなたはどのような価値観を擁護しますか?
形や素材を超えて、私が興味を持っているのは作品とそれが置かれる環境の出会い。それから芸術と建築、芸術と自然、芸術と人との相互作用です。 私の彫刻は、視点を広げ場所の読み解きを容易にしなががら、特定の側面が明らかになるまで対話する空間の中で具象化されます。 芸術的なインスタレーションは疑問を引き起こし、敏感な経験の新しい分野を提供します。 私は、芸術のための場所と、すべての人がアクセスできる空間、その両方で想像力を刺激し、世界の詩的なビジョンを提供することによって、一般の人々と直接かつ親密な関係を築きたいと思っています。
ルイーズと日本
■日本は好きですか?
はい、子供の頃から、日本の文化の洗練さに驚いています。
■日本について何か特別な経験や思い出はありますか?
10代の頃の夢のような京都旅行と、お寺での書道に参加したあと、素晴らしい庭園を発見したこと。
■興味のある日本のアーティストや作品はありますか?
陶芸家の勝俣 千恵子の作品、アーティスト内倉 ひとみの作品、写真家川内 凛子さんの写真がとても好きです。
■日本のアーティストとその作品をどのように見ていますか?
日本の芸術家、そして一般的な日本の文化は、自然それからスピリチュアルな精神性に向けられており、偶然に任されているものは何もないように思われます。 それはすべて理にかなっています。
■フランスの芸術と日本の芸術の間に違いや類似点はあると思いますか?
間違いなく、これら2つの文化の共通の分母は、美しさと洗練の探求です。


■今後予定しているもしくは直近の活動は?
現在マドリッドで10月31日まで展示会を開催しています。2020年3月にマドリードで開催されたJustMadアートフェアでLou&Louギャラリーでアルボア一賞を受賞したことで、ポルトのアルボアクーペラティバに9月に住む機会が与えられました。 この特別な時期に私が制作した彫刻を展示します。 ポルトガルのアズレージョにインスパイアされた作品を開発し、新しいフォーマットを試し、釉薬を作品に取り入れました。
その他では、私の作品は、アメリギャラリーの8 rue Clauzel 75009と、PhilippeHurelのショールームの4rue du Bouloi 75001Parisで継続的に発表されています。
■最後に一言?
私の作品やアート全般に関心を持っていただいてありがとう。私たちが生きるこの困難な時代において、創造性は非常に重要であると信じています。アートが世界へ活力や希望、喜びを与えるのに役立つことを願っています。
(Texte : Ayami Ijima)