柔らかな曲線と色で構成された寝台ソファー(dunes)、傾斜した座面に、伸縮素材が張り巡らされた椅子(la sChaise)、特大サイズの小石のデザインのクッション(livingstones)、空気中に浮遊している島のような木製テーブル(livingisland)、金属でできた小枝のようなパイプ(le sifflu)。

ある日、私はデザイナー、ステファニー・マランのアトリエで、彼女がデザインしたオブジェたちを実際に試してみる機会に恵まれた。

私はdunesの曲線に自分の身体をおそるおそる沿わせてみる。la sChaise に腰を降ろし、座面の伸縮性に誘導され、上下の動きを軽やかに繰り返す自分の身体の感覚にしばらく没頭する。le siffluの先を口に当てゆっくりと息を吸い込んで自分の呼吸に意識をむける。
日常であまりしない姿勢や動作をオブジェに誘導され、初めのうち、自分の身体にぎこちなさや少しの違和感を感じる。しかししばらくすると、少しずつ自分の身体がオブジェと一体化したかのような、不思議な心地よい感覚を覚える。そのまま目をつむりまるで瞑想するかのように、その不思議な身体感覚に意識を向けてみるようにすると、突然、青い海の中にドボンと飛び込んだ時の感覚、砂利が広がる海岸の匂い、妙にすっきりとした気分で目覚めた朝の光、それらがフラッシュバックのように記憶に蘇り、思わず目を開けた。

身体感覚を再認識させ、個人個人に秘められたそれぞれの創造性を育むための身体へと誘導していくかのような、ステファニー・マランのデザイン、そしてそのオブジェたち。

 

la sChaise ©smarin

 

 

livingstones ©smarin
nap bar ©smarin

■あなたのアートをあなた自身でどのように説明しますか?
デザイン:デザインに関わる体系と相互作用を考慮しながらオブジェを構想すること。

作品を制作する上で、一般的に最も重要なことは何ですか?

まず非常に重要なのは、私たちが決めたいくつもの条件を1つにまとめることね。
例えば、まず私たちはコミットするプロジェクトを決定する。そして市場の制約をできるだけ受けることなく、私たちの作品のユーザーにサービスを提供することに全力で取り組み、とても革新的な提案を見つけること、それを計画するの。

それから、私たちの仕事が、有毒物質の少ない快適なアトリエで展開されること。チームが調和がとれたストレスのない雰囲気で働くこと。

そして、作成された製品が、ユーザーにとって可能な限り健全であること。
私たちは環境への影響を最小限に抑える方向に取り組んでいるの。私たちの製品はとても頑丈で、取り扱いに懸念することもない、簡単にリサイクルすることができる、とても優れた姿勢の習慣をユーザーに提供できて、 それから設置場所に調和して浮かないこと、それらがとても大切。

smarin studio ©smarin

 

studio of smarin ©smarin

 

studio of smarin ©smarin

 

studio of smarin ©smarin

 

あなたのインスピレーションの源は何ですか?
ユーモア、軽やかさ、自然の形、人、動物、植物! それらすべての間のミクロの相互作用。

 

どうしてこの表現方法を選んだのですか?
選択したってわけではないの。私にとって一番シンプルな方法だっただけ。

 

smarin studio ©smarin
ステファニー・マランと日本

日本は好きですか?

はい、日本から来ている概念が好きかな。
それから時々玄米茶を飲むのが好き!

 

日本についての何か特別な経験や思い出などはありますか?

1990年から2000年の間で、日仏間のコラボレーションができたとてもよい年があったの。
リサイクルのテキスタイルを使ったわたしの作品を集めてくれていた衣料関係の日本のクライアントがニースに来て、非常に楽しく仕事をシェアできて、とてもよい日を過ごしたわ。

fantasticks ©smarin

■日本の芸術家もしくは芸術作品で興味があるものはありますか?

アニメ映画監督の宮崎 駿、映画監督の黒沢 明、インテリアデザインナーのイサム・ノグチ、浮世絵師の葛飾 北斎、建築家の坂 茂
それからドラマシリーズの「深夜食堂」


■日本の芸術家やその作品をどうみていますか?

精緻さ。彼らのアニミスト(生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方。)な部分が好き。

 

■日本のアートとフランスのアートには違いがあると思いますか?

はは、正直、それに関しては分からないな。 人間と人間の間にはとても多くの違いがあって、非常に多くの要因に原因があるからね。一般化するのは難しいよね。

 

le salon géologique – stéphanie marin & yto barrada aspen art museum ©smarin

■今後の活動の予定があれば教えてください。

2020年10月にポンピドゥーセンターで開催される予定のアンリマティスの展覧会「MATISSE, COMME UN ROMAN」の訪問者向けのプロジェクト「INSIDE MATISSE」(インサイド マチス)があります。これは画家の世界の中に浸ることができる、実践のワークショップです。 このワークショップは、自由に配置させる構成になっていて、フレームを創造したりイメージを作成するために、色と柄の生地を配置させる遊びなのよ。
9月26日からパリのMAIF SOCIAL CLUBで開催されている展覧会「TROP CLASSE!」に参加しているの。舞台装置の展示とともに、今回初めて「SIGN SYSTEM(サインシステム)」という、記号から、ドローイング、ライティング、タイポグラフィまで、ローマ語とアラビア語で構成された空間のゲームを展示しています。

 

les marches – Stéphanie Marin & Céleste boursier Mougenot ©smarin
ステファニー・マラン
フランス・ニース市在住。1990年、アムステルダム、ハンブルク、バルセロナの間でテキスタイルのリサイクルプロジェクトを開発。 5年後、天然素材と手工業の染料を使った、多目的な構造を持つ衣料ライン「Habits Magiques」を立ち上げ、国際ファッション市場に展開される。
2003年、デザインと住居に研究を拡大する。小石クッション(Livingstones)を制作・発表し、スタジオsmarinを設立。

スタジオ スマラン
スタジオ スマラン(smarin)は、スタジオ立ち上げから15年、世界中で、家具、舞台装置、空間計画の分野でデザインプロジェクトを設計、開発、展開している。smarinの特異点の1つとして、設計、製造、および普及の機能を同化させるという、その分野横断的なアプローチにある。創造的なプロセスは、作品の美学に関するものと同じくらいに、人や環境へ配慮した素材の探求と、最も公正な生産を追求することでもある。
作品や装置はすべてフランスで設計および製造されており、ほとんどの場合、smarinのアトリエで製造が行われている。
現在、プロジェクトは世界150か国以上で展開。常に機能的、健康的、美的な研究の精神に基づいており、制作、イメージ、展開に関する品質は分離できない要素である。 smarinは、劇場、美術館、ギャラリー、メディアライブラリ、ホテル、ショッピングセンター、空港、文化機関などのさまざまなセクターで250を超える大規模プロジェクトを開発している。

https://www.smarin.net/

 

(Texte : Ayami Ijima)

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